経営人材の苦悩~商社が求める経営人材像とは何なのか~

商社マン

どうもお疲れ様です。リトです🔦

今回は、総合商社で良く聞かれる”経営人材”をテーマとして取り上げたいと思います。

『商社が出資した事業会社に経営幹部として出向者を派遣して、文字通りその会社の”経営”に主体的に関与させ、企業価値向上に取り組む』というのが概略で、ここまでのイメージを持っている方は多いと思います。

”経営人材”って響きはカッコイイですよね。でも実際にこれをやろうと思うと、結構大変です。どんな苦労があるのか、商社が行う事業投資の特性と絡めて見ていきましょう。

経営者の分類

まず、経営者とひと口に言っても、いくつか属性があるのかなーと思います。私は以下の3種類に分類してみました。

経営人材の分類

1.オーナー経営者:会社の創業者などが該当。自分が資金を出して立ち上げた会社の社長をやる、みたいなパターンです。

2.従業員上がりの経営者:新卒からずっと勤めていたサラリーマンが、その会社で出世を重ね、社長に就くパターンです。

3.雇われ経営者:会社のステージに合わせ、会社の舵取りができる人間を外部からヘッドハントして起用するパターンです。

『1.オーナー経営者』『2.従業員上がりの経営者』は馴染みがあるかと思いますが、『3.雇われ経営者』は意外と意識から漏れている方もいるのではないかと思います(私もそうでした)。

商社で会社買収のうえ、買収先関係会社へ経営者として出向するときは、その会社の『創業者でもない』『従業員上がりでもない』ということで、ポジショニングとしては『3.雇われ経営者』に近いものがあると私は見ています

外部からヘッドハントする代わりに、自社(商社)内の優秀人材を送り込むということですね。因みにですが、投資銀行やファンドは、どちらかというと外部から優秀人材を雇用することを志向する傾向にあり、この点は商社と事業投資のスタイルが違うかなーと感じるところです。

経営人材の苦悩

親会社(商社)から買収先関係会社(事業会社)へ出向した職員は、当然ながら、事業会社の経営者ですが、株主の従業員という属性もあわせ持ちます。実際問題、これはけっこう厄介なのです。

『何が厄介なの?』という疑問には、いくつか具体例を見た方が分かりやすいかと思いますので、経営人材を悩ませるシチュエーションを挙げて見ます。

1.他事業への貢献

・親会社から見ると、買収先会社の事業と親会社の既存事業のシナジーを追求すべく、買収先事業会社に対して、親会社の顧客へアピール為のプレゼンに付き合わせるなど、親化会社の他事業への貢献も求めたくなります。

・一方で、事業会社から見ると、親会社の別事業への貢献に関心はありません。あくまで自社の業績のみが関心ごとなので、余計な仕事を増やして欲しくないくらいの気持ちです。

2.余剰資金の使い道

・親会社から見ると、買収先会社の余剰資金は配当として引き上げることを考えます。

・事業会社から見ると、配当に回すのではなく、自社の成長投資に使いたいと考えます。

3.規範の違い

・親会社と事業会社で内部統制レベルにギャップが生じることがあります。

・往々にして日本企業は業務プロセスに細かくなりすぎるキライがあり、親会社の規則を事業会社に押し付けることで、事業会社から面倒くさがられることがあります。

いかがでしょう?徐々に、親会社と事業会社の板挟みポジションはちょっと大変な感じが伝わってきましたでしょうか?

出向元・出向先の相反する要求をうまく捌いていくスキルが求められます。

さらにもう一つ重要な要素として、どの程度コントロールできる権利を持っているかという視点があります。こちらも見ていきましょう。

どの程度のコントロール権か?

親会社が事業会社に対してどの程度のコントロール権を持っているかは、端的には出資比率に現れます(実際は、取得する株式の種類によって、議決権と出資比率がイコールにならないケースもありますが、細かい点は省略します)

51%以上の出資比率であれば子会社、20-50%であれば関連会社と会計上の区分が変わるように、出資比率が下がると、徐々に親会社のコントロール具合が落ちていきます。

どの程度のコントロール権を得ることが最適かは、事業の性質、他株主との力関係、拠出できる出資金額リミット等の要因を考慮したうえで決定されるのですが、仮に自分が経営幹部として出向するならどうでしょうか?

一見、コントロール権が強ければ強いほど良いようにも見えますが、スキーム上のコントロール権が弱い方が、上記でみてきたような項目を100%実行仕切れなくても、『十分な権限がない』ということで親会社へのリーズニング(言い訳)が立ちます 笑

勿論その分、パートナー会社(他の株主)との関係に頭を悩ますことになるので、その点はお忘れなく。故にパートナー選びはとても大事です。

おわりに

いかがでしたでしょうか?『経営人材』という言葉の響きはカッコイイ一方で、常にダブルスタンダードの状況で、うまーくモノゴトを纏めていく力が必要です。基本的なビジネススキルが備わっていることに加え、『人間力』とでも言うべき能力が必要なことが感じられたかと存じます。

実際に経営人材として事業会社に派遣されたときのイメージが少しでも具体的になったなら幸いです。

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