商社とファンドの事業投資の差

商社マン

お疲れ様です。リトです🔦

さてさて本日は、商社とファンドの投資の差について感じることを書いて行きたいと思います。

総合商社は事業投資会社化して久しいと思います。

こうなってくると、同じような業態としてファンドとの比較が気になってくる方もいるのではないかと思い(あまりいない?)、今回のテーマを取り上げました。

就活や転職を考える方々の参考になれば幸いです。

それでいきなりですが、私が感じる一番の差は、ズバリExitです。つまりは事業売却の部分ですね。

『むむ?投資ではなく売却なの?』と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。解説していきたいと思います。

まず、商売の基本は何と言っても『安く買って高く売る』こと。これに尽きます。

ファンドの方は、割と明確に5-7年でExitする、という感じでExitに対する強いコミットメントがあります。

一方、商社の方はどうかというと、意外とExitタイミングについては曖昧です。

これは『長期保有目線での投資ができる』とポジティブな文脈で語られることも多いですが『果たして実情はどうだろうか?』という視点をもって振り返ると、Exitに対するインセンティブがあまりない組織設計に目が行きます。

まず、3-4年くらいで人事ローテーションがあります。部長は、自分の任期中に何ができたかということをとても気になりますよね。

そのとき、”過去に他の誰がか投資した案件を売却すること”と、”新しい投資案件をやり遂げること”を比較すると、どっちに取り組んだ方が自分の功績になるか考えてしまうのが人情だと思います。

当然ながら、なんとなく後ろ向きな空気感を醸し出す売却よりも、華々しさのある新規投資案件の方に取り組みたくなります。その方がきっと良い評価も貰えるのでしょう。

というこで、投資実行済案件について、一番旬な売り時はいつか?という視点でモノゴトを見る気持ちが商社ではあまり強くなりません。ここに隙があります。

一方、ファンドの場合は、自分が投資実行に関わった案件が生んだ収益に応じて、売却益の一部を個人が受け取ることが多いので、良い条件で売り抜きたいという意識が働きます。

勿論、長期目線で案件に携わり、事業を後任に引き継ぐ過程で、色んな人のアイデアが混ざって事業価値向上させていく、そんなケースもあります。

でも現実には、人事異動の度に過去の経緯や案件に対する知見が失われ、バリューアップどころか現状維持すら難しい、ということも全然起こります

そもそも長期目線での案件となると、時間が経てば経つほど、案件担当して新たに着任する人は大変です。投資後10年の案件であれば、最初に10年分のバックグランド知識を頭に叩き込む必要がでてきます。

冒頭に”Exit”で差が付く、と取り上げましたが、折角なので入口の方にも少し触れておきましょうか。

会社を買収するとき、その値決めは大きな論点です。この価格算定のことを、Valuation(バリュエーション)と呼びます。

当然ながら、買い手はなるべくこの金額を低くすることが大事です。まさに『安く買って高く売る』の『安く買う』の部分ですね。

実際の取引価格は当然ながら買主・売主で利害が完全に対立するので、結構時間を要します。こういう交渉事では、だいたい焦った方が負けです。

なのですが、商社、というか日本企業はやはり毎年の決算に重きを置きますし、決算数字へのインパクトはあまりなくても今期の目標を買収実行にしていたので、何とか交渉して価格を纏めたい、そんな思いが働きやすい環境にあります。

まぁこれ自体は、プロセス加速につながるので良いのです。。

ただアリがちなのが、”売り手と交渉を頑張る”のではなく”社内説得”、つまりは自分が提示している高い価格の正当化に時間を使うようになることがあります

『どういうことか?』つまり『多少高く買ったとしても、その後事業が成長することを示すことができれば、その後に巻き返しができるから良いよね』という論法です。

それで、対象会社買収による既存事業とのシナジー効果(相乗効果)など、色んな”夢(できたら良いな)”をValuationに反映し、いかに今の取引価格が正当なものか、をアピールします。

程度問題はありますが、これは非常にリスキーな行為となります。

夢(できたら良いな)はValuationに織り込んだ瞬間、買収後、買い手にとってアップサイドではなく、”実現しなければならないベースケース”になります。

皆さん頭ではこのことを分かっていても、いざ実際に取引が纏まるかどうかの瀬戸際に立たされると、ついストレッチした計画を基に買収を進めてしまいます。

買収成立したその瞬間はまさによかった良かった、という雰囲気になりますが、数年も経てばボロが出ます。

『アレ?なんかこの事業って思ったほど収益良くなくね?』という状況になり、過去の資料をあさっていくと買収価格が高すぎたことに行き着く。

『でも買収時の担当ラインや決裁者を攻めるのもなんか微妙な空気感が生まれるだけだし、、どうしよ。ま、これは自分が買収した案件ではないし、そもそも無理ゲーな前提条件だったのだから自分に責任は無いよね。バリューアップとかは放っておいて、自分がやったという案件を作りに行こう』(以降、ループ……)

ちょっと極端に書いていますが、これに近い状況が生まれることが全然あるのが商社、というか日本企業の組織設計です。

思うに、商社という業態はちょっと特殊で、昔はトレーディング事業メインだったものが投資に舵を切ったこともあり、組織や制度設計が投資事業にうまくフィットし切れていないのでは?という感じもありますね。

このあたり、どうやってファンド等と伍していくのか、けっこう問われているのが実情です。

ということで、実務で生じる人間くささを感じるような部分を紹介してみました。商社という業態理解の助けになれば幸いです。

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